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【2023年10月7日(土) ~9日(月・祝)2泊3日宇宙の叡智シリーズ7が開催されます。】

違いを超え、人間観を融合し、宇宙の真理を紐解く。

鹿児島大学 稲盛アカデミー専任教授をされていた時の奥先生の研究論文の抜粋から。恩師と仰ぐ、京セラ、KDDIの創業者であり、日本航空の奇跡の立て直しをされた稲盛和夫氏が語った西郷隆盛の南洲翁遺訓の第一条、第四条をご紹介します。

一 廟堂に立ちて大政を為すは天道を行ふものなれば、些とも私を挟みては済まぬもの也。いかにも心を公平に操り、正道を踏み、広く賢人を選挙し、能く其職に任ふる人を挙げて政柄を執らしむるは、即ち天意也。夫れゆゑ真に賢人と認むる以上は直に我が職を譲る程ならでは叶はぬものぞ。故に何程国家に勲労有り共、其職に任へぬ人を官職を以て賞するは善からぬことの第一也。官は其人を選びて之を授け、功有る者には俸禄を以て賞し、之を愛し置くものぞと申さるるに付、然らば尚書仲儀之誥に「徳懋んなるは官を懋んにし、功懋んなるは賞を懋んにす」と之れ有り、徳と官と相配し、功と賞と相対するは此の義にて候ひしやと請問せしに、翁欣然として、其通りぞと申されき。

(南洲翁遺訓第一条)

(訳)政府にあって国のまつりことをするということは、天地自然の道を行なうことであるから、たとえわずかであっても私心をさしはさんではならない。だからどんなことがあっても心を公平に堅く持ち、正しい道を踏み、広く賢明な人を選んで、その職務に忠実にたえることのできる人に政権をとらせることこそ天意すなわち神の心にかなうものである。だからほんとうに賢明で適任だと認める人がいたら、すぐにでも自分の職をゆずるくらいでなくてはいけない。従ってどんなに国に功績があっても、その職務に不適任な人を官職を与えてほめるのはよくないことの第一である。官職というものはその人をよく選んで、授けるべきで、功績のある人には俸給を与えて賞し、これを愛しおくのがよい、と翁が申されるので、それでは尚書の仲儀の誥の中に「徳の高いものには官位を上げ、功績の多いものには褒賞を厚くする」というのがありますが、徳と官職とを適切に配合し、功績と褒賞とがうまく対応するというのはこの意味でしょうか」とたずねたところ、翁はたいへんよろこばれて、まったくその通りだと答えられた。

四 万民の上に位する者、己れを慎み、品行を正しくし、驕奢を戒め、節倹を勉め、職事に勤労して人民の標準となり、下民其の勤労を気の毒に思ふ様ならでは、政令は行はれ難し。然るに草創始めに立ちながら、家屋を飾り、衣服を文り、美妾を抱へ、蓄財を謀りなば、維新の功業は遂げられ間敷也。今と成りては、戊辰の義戦も偏へに私を営みたる姿に成り行き、天下に対し戦死者に対して面目無きぞとて、頻りに涙を催されける。

(南洲翁遺訓第四条)

(訳)多くの国民の上に立つ者は、いつも自分の心をつつしみ、身の行いを正しくし、おごりやぜいたくをいましめ、むだをはぶきつつましくすることにつとめ、仕事に励んで人々の手本となり、一般国民がその仕事ぶりや生活を気の毒に思うくらいにならなければ政府の命令は行われにくいものである。しかしながら今、維新創業の時というのに、家をぜいたくにし、衣服をきらびやかにかざり、きれいな妾をかこい、自分一身の財産を蓄えることばかりをあれこれと思案するならば、維新のほんとうの成果を全うすることはできないであろう。今となっては戊辰の正義の戦いもひとえに私利私欲をこやす結果となり、国に対し、また戦死者に対して面目ないことだと言って、翁はしきりに涙を流された。