人格といのちを高める医療を目指して クリニック院長 井上弘寿
院長就任のご挨拶
この度、学生時代からの恩師である巽信夫先生(いのちの森クリニック初代院長、前信州大学医学部助教授)の後任として、いのちの森クリニックの院長を、塩澤みどり先生より拝命しました。
いのちの森クリニックは、いのちの森構想の一環として2011年に開設されました。開院に際して巽先生は、「合理性や生産性追求を至上とし、高度情報化に伴う無縁社会」において「人間疎外化」が起こり、「自然と人間との生きたつながりの喪失にこそ、現代病の根源がある」と鋭く指摘され、「人間が自然の子としての存在の原点(いのちの存在)に立ち返ることにこそ、まさに人間再生への道がある」と喝破されました。いのちの森クリニックを開院した問題意識、目的意識が如実に示されています。クリニックが開院した2011年は、東日本大震災、福島原発事故という未曽有の災害が起こった年でした。その背景を考えると、巽先生のお言葉の含蓄が幾重にも深く身に染みます。
さて、いのちの森クリニックが目指すのは、こころと身体の調子を整え、人格といのちを高めていくことです。表面に現れた病気や症状の治療を行うだけでなく、感じ方、考え方、行動の仕方、対人関係の持ち方の傾向性(パーソナリティ)を把握し、生き方、働き方という人格といのちの根本的なところに目を向けていきます。
こころと身体の調子を整え、人格といのちを高めていく実践は、診察室の中で完結するものではありません。その実践の舞台はあくまでも、日々の地道な生活実践、職業実践、対人関係の切磋琢磨の中にあります。
いのちの森・水輪には素晴らしい実践のフィールドが用意されています。飯綱高原の静謐な自然に抱かれた、全寮制のフリースクール「生き方働き方学校」、広大な自然農園「水輪ナチュラルファーム」、木々の息吹も爽やかな自然食レストラン・宿泊施設「グリーンオアシス」、各界一流の講師を招いたセミナー。いのちの森・水輪を舞台に青年達は、日々の真剣勝負に挑み、心身を鍛錬し、人格といのちを磨いています。
いのちの森クリニックは、医療の枠を超えたフィールドと治療的・教育的プログラムをもっています。従来の医療では十分な対応が困難な生活機能と職業機能を向上させ、人格といのちを高めていくことを目標としています。
将来的には、日本の精神医療、ひいては人間教育の新しいモデルとなり、合理性や生産性を至上とする現代社会に一石を投じる使命があると自覚し、診療および治療・教育プログラムの質を高めていく所存です。
いのちの森クリニックは、すべての人に開かれたクリニックとなることを目指します。皆様お一人お一人のニーズにお応えできるよう努めてまいります。ぜひお気軽にご相談ください。